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よくある質問

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単純承認とは?

 

単純承認とは、相続人が被相続人の権利義務を承継することです。

普通の相続を認めることです。

この単純承認がある場合には、相続放棄はできなくなります。

単純承認によって、相続人の状態がプラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い、借金、債務の方が多い場合には、自分の財産をもって責任を負うことになります。

被相続人の債権者は、相続人自身の財産へも差押ができるようになります。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.29


法定単純承認とは

一定の事由があると、当然に単純承認になるものがあります。これを法定単純承認といいます。

法定単純承認として決められていることをすると、単純承認となり、相続放棄や限定承認はできなくなるのです。

法定単純承認にあたるようなことを相続人がしたのに、あとから相続放棄を認めるのは不公平であることなどが、この規定の趣旨です。

法定単純承認にあたる事由としては、以下のものがあります。

 

 

相続財産の処分

相続人が、相続財産の全部又は一部を処分したときには、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。

財産処分は、その権利があることを前提としていますので、相続放棄とは矛盾する行為ですね。

ここでいう「処分」は、法律的な処分に限らず、事実上の行為も含みます。

建物の取り壊し、動産を壊すような行為も処分になります。

 

相続放棄と保存行為

相続財産を処分すると単純承認になり相続放棄はできなくなる一方で、保存行為及び利用行為は「処分」には含まれません(民法921条1号ただし書)。

相続財産については、自分の財産と同じように管理しなければならないとされており、保存行為はこの管理義務の範囲内の行為といわれます。

保存行為の定義については、条文では書かれていませんが、相続財産の保全、財産の現状を維持するに必要な行為をいうとされます。

たとえば、弁済期が来ている債務の弁済、腐敗しやすい物の処分も含むと解されています。
相続財産に含まれる債権について、債務者に請求・催告をして時効を中断させる行為も保存行為にあたるとされます。

財産全体の状況をからみて、現状を維持するために必要かどうか解釈されます。

債務の弁済については、相続人自身の財産から弁済するのであれば、相続財産の処分にはならないという考えが主流です。単純承認にはならず、相続放棄はできます。

これに対して、相続財産の預貯金を出金して弁済にあてる行為がどうなるか問題になります。

預金の出金をみると相続財産の処分といわれてしまいそうです。

一方で、これを債務の弁済にあてたのであれば、全体の相続財産をみると、保存行為の範囲内と解すべきとも思われます。このような見解を示す文献もあります。

弁済については、考え方が分かれているため、リスクを下げるならば、預金からの出金はしない方が無難という結論になるでしょう。熟慮期間であることを理由に弁済を拒むというのがリスクの低い対応になります。


なお、相続債務の弁済は保存行為になるという考えが主流ですが、代物弁済契約の履行は処分とする裁判例がありますので、気をつける必要があります。

 

相続を知らずに処分した場合

また、相続財産の「処分」といえるためには、相続財産であることの認識も必要です。

被相続人の死亡の事実を知らなかった場合、相続財産という認識すらなく、それを処分したとしても相続財産の「処分」にならないとした最高裁判例もあります。

最判昭和42年4月27日。

たとえ相続人が相続財産を処分したとしても、いまだ相続開始の事実を知らなかったときは、相続人に単純承認の意思があったものと認めるに由ないから、右の規定により単純承認を擬制することは許されないわけであって、この規定が適用されるためには、相続人が自己のために相続が開始した事実を知りながら相続財産を処分したか、または、少なくとも相続人が被相続人の死亡した事実を確実に予想しながらあえてその処分をしたことを要するものと解しなければならない。

 

 

相続放棄と形見分け

過去の裁判例では、被相続人の形見分けが「処分」になるのではないかと争われたものが多いです。

昔の裁判例では、被相続人の衣類を形見分けした場合でも、一般経済価額を有するものを他人に贈与したときは「処分」に該当するとし、相続放棄が許されないとしたものもありますが、その後の裁判例では、古い衣類や価値のない動産の形見分けについては、「処分」にならないとされています。

東京高決昭和37年7月19日。

「原審の確定した事実によれば、相手方キヨコがその元使用人に与えたのは既に交換価値を失う程度に着古したボロの上着とズポン各一着であつたというのである。再抗告人はこれを民法第九百二十一条第一号にいわゆる相続財産の処分に該当しないとした原審の判断を非難するのであるが、前判示によれば右古着は使用に堪えないものではないにしても、もはや交換価値はないものというべきであり、その経済的価値は皆無といえないにしても、いわゆる一般的経済価格あるものの処分とはいえないから、前記規定の趣旨に照らせばかようなものの処分をもつてはいまだ単純承認とみなされるという効果を与えるに足りないと解するのが相当である。」

 

 

 

支払を受ける行為

保険金などの場合に問題になりますが、債権の回収や弁済金を受け取る行為が、処分になるかという点があります。

保険金について受取人固有の財産とされる場合には問題ありませんが、そうでない保険、被相続人が受取人とされているような保険金を受け取ることは、相続財産の回収になります。


ただ、弁済がある以上、これを受領しただけでは処分行為にならないとされます。もちろん、弁済を受けた現金を自分のものにしてしまったら、単純承認になります。

 

最判昭和37年6月21日。

「上告人が右のように妻富の有していた債権を取立てて、これを収受領得する行為は民法九二一条一号本文にいわゆる相続財産の一部を処分した場合に該当するものと解するを相当とするから、上告人が判示爾余の債権を如何ように処置したか否かの点を審究するまでもなく、上告人は右処分行為により右法条に基づき相続の単純承認をなしたものとみなされたものと解すべきである。」

 

裁判例の中には、相続財産に含まれる不動産の賃料について、積極的に振込先口座を変更して回収したことは、処分行為になるとしたものもあります。管理行為を超えたものと判断されてしまっています。

東京地判平成10年4月24日。

「相続財産の管理行為と考えられる限度を超える相続財産の取り扱いは、右「相続財産の処分」に該当するものとして単純承認とみなされることとなると解するべきである。この点は、相続人に単純承認する意思がなくても、また自己の利益を図るためではなく、相続債権者に対する弁済のためであるとしても、同様に解するべきである。」

「転貸料の振込先をラ・フロールから被告名義の口座に変更し、また義正名義の口座への賃料の支払名義をラ・フロールから被告に変更することは、入居者とラ・フロールの取締役としての被告との合意及び被告個人と義正の相続人としての被告との合意があれば事実上は可能であろう。
しかし、右のような処理がされると、そのような事情を知らない被告に対する債権者が入居者から被告への転貸料の支払いを差し押さえるといった事態の発生もあり得る。そのようなことからすると、義正の口座への支払名義をラ・フロールから被告に変更するということは、義正の相続財産の管理行為にとどまらず、その積極的な運用という性質を有するというべきである。
被告は、右のようにしたのは、入居者に迷惑をかけずに入居者からの転貸料が義正の口座に確実に入金されるようにするためであり、被告が私的に入金分を流用する等のことはしていない旨を述べている。しかし、そうであるからといって、(一)のとおり義正の相続財産の運用内容が管理にとどまらないものであることに変わりはない。そして、1(三)に照らすと、右のような支払名義の変更も、「相続財産の処分」に該当するといわざるを得ないのである。」

 

 

葬儀代の支払

相続財産から葬儀費用を支出した行為が問題にされた裁判例も多いです。

金額にもよるでしょうが、裁判例の中には、葬儀費用の支出はやむを得ない支出として「処分」にならないというものが目立ちます。

大阪高決平成14年7月3日。

「葬儀は、人生最後の儀式として執り行われるものであり、社会的儀式として必要性が高いものである。そして、その時期を予想することは困難であり、葬儀を執り行うためには、必ず相当額の支出を伴うものである。これらの点からすれば、被相続人に相続財産があるときは、それをもって被相続人の葬儀費用に充当しても社会的見地から不当なものとはいえない。また、相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため被相続人の葬儀を執り行うことができないとすれば、むしろ非常識な結果といわざるを得ないものである。」

 

 

 

 


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